富田直秀(Naohide TOMITA)     e-mail: tomita.naohide.5c kyoto-u.ac.jp  ←を半角に変えてください。


Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

E-Mail: tomita.naohide.5c@kyoto-u.ac.jp
(@を半角に変えて下さい。たくさんのメールをいただいており、お返事できない場合が多いと思います。申し訳ありません。)

2018年04月21日

入場券をお送りした方々への言い訳書です

言い訳書

  上野の森美術館大賞展の入場券をお送りします.「もくてきはない1 no purpose1」(作者名:町井直秀)を出品しておりますので,もしお時間があれば,併せてごらんください.その名のごとく,作品に目的はありませんが,以下,医療工学の開発研究を生業にしております私が出品していますことなどの言い訳をさせていただきます.

  まず,社会的視点から見た私(作品)についてお話しします.医療・福祉現場には,どうしようもない不自由な状況があります.もちろん,医療技術開発者として,また,もと臨床医としても,このどうしようもない状況に対して常に挑戦的であらねばならないのだと思います.しかし,日本画家の故小池一範先生と偶然にお会いしてから様々なアーティストの方々と交流するようになり,さらに家内の医療事故や,高校時代に私を支えてくれた友人の不幸などを経験して「役に立つ」ことを考えますと,医療と工学だけではなく,アートの概念が,本当に「役に立つ」ことためには必要不可欠であろう,と思うようになりました.これまでの人工関節や軟骨再生分野における治療開発は今まで以上に継続しますが,アート概念をこの分野に融合させる活動も精力的に行っていこうと考えています.昨年行いました「病と雑音の香り」企画から,難聴の方に音楽を味わっていただく動画を作成した例(京都大学 OCW),
https://youtu.be/oYA8p0M0trY?t=3259
をご覧ください.石上真由子さんの演奏(André Jolivetの曲)の音を消して、デザイナーの桑田知明さんの動画の絵を提示しています.演奏後に全盲の広瀬浩二郎先生(国立民族学博物館)が述べられた感想も併せてご鑑賞ください.目が見えない,耳が聞こえない,歩けない,記憶できない,,,などの機能障害の故に,かえって深まる世界観を表現することによって,客観的に見た機能障害の自分と,それぞれの世界観から見た自分との矛盾的な同一の動きを表現し,従来の「役に立つ」を "ANSHIN" という概念に拡張し,開発の一つの具体的な方向性として海外にも主張をしていきたいと考えております.

  次に,私の内面から見た世界観をご紹介します.
幼少時より極端に記憶力が劣っており,また,意志を持つとその意志に逆らう力が内から湧いてきてしまう人間である私は,目的を持たず,ただ目前の「できること」に集中することで,この歳まで何とか処世を続けてまいりました.「役に立つ」を研究の目標に掲げてからも,計画を持たず,目前の思い付きの実現にのみ集中してきたのだと思います.記憶によって支えられた確固たる自分を持たず,目前のヒトやモノやコトにすがって生きている私は,前述のように医療福祉現場や身近の「絶望」を経て,「祈る」ことの表現に至ったのだと思います.研究においては「機能」を,アートにおいては「かけがえのなさ」を漠然と念頭においておりますが,私の内面において両者に区別はなく,研究や開発においても,その目的性よりも,むしろ目的の無い「祈り」こそが, "ANSHIN" に至る現実的な方法論であると考えています.

  前述のごとく,今回の作品に意図・目的はありませんが,「できる」ではなく「できない」ことによる世界観の深まりを意識しております.

2018年4月


富田(町井) 直秀
posted by トミタ ナオヒデ at 08:06| Comment(0) | プロフィール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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医療工学研究室 富田研 425号・426号
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