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Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

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2010年01月12日

狡さを恥じる処世

 あわただしく、恥の多い日々がすぎている。

 生きるためにも勝つためにも、不可避に狡さが生じてしまう。この狡さを徹底的に(死ぬるほどに)恥じるところに、ただ狡猾に生き抜くのとは異なったもう一つの処世があるのだろう。誤解され様々に利用された歴史を持つ『葉隠』の一節、

「武士道と云ふは、死ぬ事と見付けたり」

は、そういった狡さを恥じる文化の一つの到達点を表しているのにちがいない。

 私は20代後半になってから剣道をはじめ、今も時々学生に相手をしてもらっている。剣道には、強く速く狡猾な数多くの技に混じって、一見ひ弱で愚直なほどに無防備だが飛び抜けて強く美しい技が、たしかにある。もちろん私はその域には遠く到達していないが、しかし、時として狡さを廃した捨て身の技に本当の強さがあることを、学生たちの動きの中にも垣間見ることができる。
 剣技と社会生活とのアナロジーがどの程度妥当であるかは議論があるかもしれないが、社会の中で日々画策される強く速く狡猾な数多くの企みの中で、時として、狡さを恥じた捨て身の行動が社会の中で大きな力を発する例が歴史の中には散見される。たとえばガンジーのインド独立運動がその典型的な一例だろうか。またたとえば、武器商人の一介の仲介者であり、見方によれば内乱を画策したとも読みとれる坂本龍馬の行動が、幕末の日本に大きな仕事をなしたとして現在も多くのファンを引きつけるのは、彼が徹底的に(死ぬるほどに)狡さを恥じた逸話を持つからではないだろうか。
 ガンジーや坂本龍馬の評価云々は歴史家に任せるとして、私個人としてはこの狡さを恥じる処世に対して相反する2つの思いがある。一方は、現代の日本では強く速く狡猾な企みばかりが功を奏していて、狡さを恥じる処世の、その細く鋭い一線を理解し実践できる人が、もういないのではないか、と思われることである。また一方は、もしそのような人が再び現れたとしても、感情を刺激する情報表現が発達しすぎた現代においては、その影響力が誇張されて不自然に大きな力となり、かえって社会を危機に陥れはしまいか、という危惧である。
 狡さを恥じる心を思い出させてくれる人は今の社会にぜひとも必要だが、それは等身大の人物であって、清く正しい偶像である必要はない。
posted by トミタ ナオヒデ at 13:25| プロフィール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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