富田直秀(Naohide TOMITA)     e-mail: tomita.naohide.5c kyoto-u.ac.jp  ←を半角に変えてください。


Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

E-Mail: tomita.naohide.5c@kyoto-u.ac.jp
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2011年08月10日

自分のやりたいことが,,

  昨日,数年前に修士を修了した卒業生が研究室に顔を出してくれた.彼は,私がいつものようにふっかける無理難題を,最後にはなんとか形にしてしまう,優秀で多能で頑丈な人物だった.社会人らしい風貌も身につけて,かわいい嫁さんまで連れてやってきた彼を目の前にして,私は,そうして研究室は,いったい彼に何を与えることができたのだろうか,と自問する.
  学生の頃の私は,人に命令されるよりも自分であれこれと探して実験をするのを好んだ.指導する立場となった今も,研究の目的は学生自身が探す方が,つまり,こんな事が求められているよ,けれども,やりたいことをやれよ,と突き放されるほうが良いのだ,と決めつけている.しかしそれは,自分の専門性さえまだままならない学生たちにとっては,極限に近い重労働だ.Probrem oriented research と言うと聞こえはいいが,当の研究者たちは七転八倒の思いをして,やりたいこと,と,やらなければならないこと,を結びつけていく.うまく事が進むと,独創的で,生き生きとした研究になるのだが,どの分野の研究とも判断がつかない,悪く言えばお手製の研究論文ができあがる場合もある.今日訪問してくれた卒業生が研究室にいた頃は,ちょうど細胞培養を用いた実験系を構築し始めた頃で,今にして思えば機械系の学生には無理難題をそれぞれの学生に強いていたと思う.彼は,現在はエンジン部品の開発を行っているのだが,同僚たちに学生時代の研究内容を話すと,皆びっくりするのだという.「それでも,うちの研究室に入って良かったと思うか?」とは,少し怖くて聞けなかった.目の前の卒業生は,かわいい嫁さんと並んで,ただにこにこと笑ってこちらを見ている.
  ところで,「持続的に役に立つしくみ」つまり,事業化を,医療科学の世界でも実現させるのが,私の一つの夢だ.近年では,研究費獲得のために基礎の研究者までもが,事業化事業化,と言うが,これはそう甘いものではない.もともと,政策や計画や原理といった,研究者がお得意のトップダウンの考え方だけでは実現することは不可能だ.ボトムアップに,関わるひとりひとりがモチベーションを持ち,しかも,「自分のやりたいことがヒトのためにもなる」という処世と力量を身につけることが,まず第一の条件なのだ,,,,,,
  「で,今は,自分のやりたい仕事をしているのか?」と,この卒業生に聞くと,「今は満足しています,将来はわかりません」と言う.微妙なところだ.彼のことだから,職場では大いに認められているに違いない.しかし,ここから先に,彼が大きく躍進する時には,なにが必要なのだろう.そのときに「自分のやりたいことがヒトのためにもなる」ために,大学は何を教えておくべきなのだろうか.座学とテストの繰り返しだけではだめなのだと思う.しかし,指標を与えずに漠然とやりたいことを探させるのも,雲をつかむようなものなのかもしれない.まず,自分はいったい何ができて,何ができないのか,をしっかりと自覚させるところから始めてやらなければならないのだろう.
  計画された実験系を最初から学生に示してみせる,いわゆる「ここ掘れわんわん実験」を,私は大嫌いなのだが,「ここ掘れわんわん実験」は,たしかに,一つの確固とした方法論を学生に教え込むことができる.つまり,ある専門の範囲内で事実をしっかりと確定させていく作業を体験させることができる.第一,ここ掘れわんわん実験の構築には多大な努力と才能とが必要なのだ.私も,これを避けていてはいけないのかもしれない,と思う.おっさんのように少し広くなった卒業生の背中(と,しつこいようだが,並んだかわいい嫁さんの背中)を見送って,改めて教師の責任の重さを思う.
posted by トミタ ナオヒデ at 08:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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