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Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

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2012年10月10日

ちんちろりん

               「ちんちろりん」

                                   富田直秀

  先先日の研究室旅行で,十何年ぶりかで「ちんちろりん」を学生たちと楽しんだ.三つのサイコロを振って,その目の数で勝ち負けを決める.基本的には運だけの勝負だが,次の勝負にどれだけの点数(もちろんのこと現金や物品は賭けない)をつぎ込むかで,いわゆる運の流れのようなものを楽しむゲームだ.実を言うと,私はこのゲームでまだ一度しか負けたことがない.(新婚の頃に家内に一度だけ負けた,,)もちろん,サイコロの振り方などにズルをしてサイコロの目の出方を変えるのではない.次にどれだけ点数をつぎ込むか,の判断において予感が働いているわけでもないだろう.強いてコツとして思い浮かぶのは「欲を出さない」「捨身である」「主導的立場となる」の3点である.
  サイの目の勝負は運だけで決まり予測も不可能だが,点数勝負にはまったく理性的判断の入り込む余地がないわけではない.たとえば,終盤に大量にリードしていれば多くの点数を注ぎ込まずに逃げ切ったほうが得であろうし.さらに,勝っているときはリード幅よりも多くの点数つぎ込まない,という「欲を抑えた」,また,負けているときは負け幅よりもわずかに高い点数をつぎ込む,といった「捨て身の」行動によって,少なくともリードをしている状態の回数を増やすことはできる.しかし,これだけではリードしている回数を増やすだけであって,負け続けて大損に陥る可能性が含まれているので,無数回のゲームで期待される得点を平均すれば得点の差はなくなる.有限回のゲームで,いわゆる勝ち逃げが許される程度の「主導権」を握っていれば,勝ち逃げを繰り返すことで必勝が可能となるのだろうか?私はその方面の専門家ではないが,勝ち逃げを繰り返す(つまり,場に流通している価値を少しずつ自分の懐に移行させる)方法の実現性も疑問視されているらしい.論理的にすっきりとした説明がなかなか難しいが,それでも,たとえば,勝つと調子に乗り,負けると諦めたり無謀になる人の多い集団の中では相当の確率で勝つことができそうに感じてしまうのはなぜだろうか?
  と,このようなことを述べている私は,組織の長にはとうてい向いていない.過去の歴史や法則から未来を的確に予測し得策を選択する理性と,得策を実現させる実行力が,組織の長には求められているのだろう.私は大学生の頃からサークル活動でも仕事でも,属する集団が躍進に転じる,という幸運に恵まれ続けてきたが,私自身はいつも集団の中で平か,または副の位置であった.予測と統制を行う組織長の横で,自分が良しと思うことを黙々と続けていたり,突然それまでの利益を捨てる変な提案をしたりしていた.このことを自己満足的妄想的に解釈するならば,歴史と法則とに固執している集団に,都合のいい時(負けている時ではなく,むしろ勝っている時)に目先を変える,という,いわば勝ち逃げの繰り返しのようなアイデアを提供していたのかもしれない.前述のようにひとつの価値基準の下では勝ち逃げによる常勝の理屈はなかなか成り立たちにくいらしいが,価値基準の自体の変更(イノベーション)があれば予測のきかない変化の中でも得策を選択できるに違いない.価値基準のframe workの変化は具体的には,目的のふりをして実は手段であったり,手段のふりをして実は目的であったりと,臨機応変に目的と手段とを入れ替えてモチベーションを持続させることでもある.たとえば,目前の勝利のために一致団結するのであれば,一見,勝利が目的であって一致団結が手段であるようだが,これは逆に勝利が手段で一致団結が目的であっても良い.確固とした目的をかかげることも躍進の一つのコツではあるが,時として事後に過度の疲労と脱力とを生む場合がある.実際に持続的な躍進を続ける集団はこの手段と目的のframe workの変化が実に巧みだと思う.個人的趣味としては,さらに共通目的までなくしてしまって,構成員それぞれがそれぞれの生き様,それぞれの価値観で動いているが,結果として,その時々の手段が一致しているような,臨機応変で自由な集団が好きである.
  なんのことはない,私は組織躍進のスイッチを密かに握っていたのかも,,などと,自我自賛で都合の良い話にまとめようとしているのだ.しかし,時間的にも空間的にも多様性を内包する社会の中では,欲に翻弄されず捨身になって主導的にframe workを変化させることが「運」を引き寄せるひとつのスイッチになっている,と述べても,あながち空言ではなかろうと思う.何を得とするか,という価値のframe workの変化は,言うのはやさしく実行には相当の抵抗を受ける.抵抗の中でも多くの賛同を得るためには,欲に翻弄されず捨身になる心構えと主導的な立場が,やはり必要なのだろう,,が.まあ,このように根拠のない自慢話は適当なところでやめておかなければならない.「ちんちろりん」に無敵であった私が,若かりし頃の妻に負けたのは,欲に翻弄され保身となり,しかも主導的に価値観のframe workを変化させることができなかったためだろう,,などと,きっとかげぐちをたたかれるからだ.


(誤解が無いように付け加えておくと,価値観のframe workを変化させるイノベーション型の人間は組織のトップに持ち上げるべきではない,または,frame workを変化が世に認められたならばすぐに主導的立場からは降りるべきだろうと思う,,,繰り返すが,過去の歴史や構造化された法則から未来を的確に予測し得策を選択する理性と,得策を実現させる実行力が,組織の長には求められている.frame work変化の後に必要とされるのはその構造化であって,イノベーション型の人間はモヤモヤとした構造のない状態から行動を選択する構成力には優れていても,万人が安心できる構造の構築に長けているとは限らないからだ.)









posted by トミタ ナオヒデ at 08:07 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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