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Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

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2014年12月05日

人の世界観を否定せず,徹底的に追求させる(小池一範先生 追悼)

人の世界観を否定せず,徹底的に追求させる(小池一範先生 追悼)

        富田 直秀

  京都市立芸術大学とのお付き合いは5年ほど以前から始まった.京都府と京都大学の共催で行った高校生向けのワークショップへの参加をきっかけとして,文化教育にも力を注いでおられた日本画教室の小池一範先生を,京都府の横田さんよりご紹介いただいたのがそのお付き合いの始まりだった.小池先生に,日本画3回生の講評会の様子を見学させていただいた時の衝撃は今でも忘れることができない.素人目には,ああ上手い,と思える絵よりも,そうではないと思われる絵に先生は注目し,またそうではないと思われるところを褒め,そこから何かを伸ばそうとされているように,当時の私には感じられた.その後,京都市立芸術大学の様々な授業やいろいろな教室の活動に参加させていただき,対象こそ異なれ同じような感覚を持つ場面を多く経験したのだが,しかしそれは違和感なのではなく,心の奥底を引き付ける何かがそこにあった.
  「それぞれの世界観を否定せず,徹底的に追求させる」これが,私を京都芸大に強く引き付けている基本姿勢なのだと,あとから次第にわかってきた.そうして,ここにこそ,私たち現代人が直面している様々な問題,たとえば,ものつくりの衰退,省エネルギー問題,心の健康,創造性教育,,,すべての解決の鍵がここにあるのだ,と確信もする.簡単に言うならば,それぞれが棲むそれぞれに異なる世界観の中にこそ私たちの本当のリアリティがあるのであって,客観的(相互主観的)に検証される事実や「わかる」ための形式は,それぞれが豊かなリアリティの中で生活するための一つの有力な手段にすぎない.この手段によって現代社会の合理性が支えられている一方において,本来は手段であるはずの事実検証や形式が,いつの間にか目的となって私たちそれぞれのリアリティを見失わせているところに,現代社会の大きなひずみがあるように思う.他人事なのではない,私自身が見かけの合理性にまどわされて若い人たちの新鮮な世界観を否定し,かといって自身の世界観と合理性との係わり合いを徹底的に追求しているわけでもない.つまるところ私たちは,自身につごうのよい理屈を周囲に押し付けているだけなのかもしれない.
  このことは,いずれまた詳しく述べなければならないが,いまは小池先生の話に戻ろう.私だけではない,小学生から老人まで実に多くの人たちに,画材という実体を用いて,自身のリアリティをみつめることの大切さ教えてこられた小池先生.若い人のそれぞれの世界観を温かく受け入れ,しかし徹底的に追求することを教えて,またご自分にもそれを厳しく課しておられた小池先生.画材の表現にとことんこだわられた小池先生.あのひょうひょうとした中に鋭い厳しさも持っておられた小池一範先生の,その悲報を昨日お聞きした.正式な非常勤講師の手続きをとらずに京大の授業などにもいろいろとご協力いただいていたこと,ジャズ喫茶のYAMATOYAに一緒に行きましょう,などと話していて,結局一度もその機会はなかったことなどなども,死という,取り返しの無さの前で強く悔やまれ,ぐいぐいと胃袋を締め上げる.
  私は大切な師を一人,失った.



posted by トミタ ナオヒデ at 11:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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