富田直秀(Naohide TOMITA)     e-mail: tomita.naohide.5c kyoto-u.ac.jp  ←を半角に変えてください。


Dr.Tomita

プロフィール

富田直秀(Naohide TOMITA)材料工学出身。もと整形外科医。現在は医療工学、デザイン、再生医療、バイオメカニクス、バイオトライボロジーなどの研究をしています。

研究とは切り離しておりますが、学生の頃から少しずつ創りためている文章、絵、写真なども公開しています。興味のある方は右のMENUからお入りください。

E-Mail: tomita.naohide.5c@kyoto-u.ac.jp
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2018年03月06日

私のニセモノ性    富田(町井)直秀

私のニセモノ性

                            富田(町井) 直秀

上野の森美術館大賞展に「もくてきはない1 no purpose1」(作者名:町井直秀)が入選(賞候補)した.目的のないところにこそ,機能回復だけではない医療の本来の姿がある,という,この絵は私の医療工学の仕事のもう一つの表現でもある.医療現場で出会った多くの人たちは,実は技術に描かれた機能回復よりも目的をもたない純粋な祈りに救われている.医療を神秘主義に陥れようとしているのではない.安定化によって不安定となる逆説的な生体システムの中で,技術はその目的を一時的に達成するにすぎないが,目的のない祈りを内包した人と人,人と技術との関係性は自(おの)ずから多様性を生み,悪循環を徐々に脱していく力となる.医療や技術の本質を,雪深い森の,冷たい湖に根元まで浸かった樹木たちの像に託した.
では具体的に何をすればいいのですか?と学生たちに聞かれれば,私のニセモノ性はすぐにでもあらわとなるだろう.人工関節や軟骨再生の仕事のなかで,私は相変わらず機能を目的にしている.技術が人に対してできる行為は,結局のところ機能回復しかないのか,その不満を絵に発散しているだけなのか,,,.
3年前に出品した「メルトダウン melt down」は,裏から顔料を流したり焼いたり千人針をしたりして制作に4年かかったが,出品してしまってからも,本当にあれは私の描きたい絵だったのだろうか,絵が帰ってきたら燃やしてしまおう,などと悩んだ.「もくてきはない no purpose」,は,その名の通り,展覧会に入選しようとする目的性や,祈りの目的性や上述のような技術の目的性を恥じて3年前に制作を開始した.『色即是空 空即是色」の白い文字で線を消し,また描き,削り,また消しと,比較的単純な作業を繰り返した.目的性を否定する行為が,かえって目的を達成させる,,,絵のことを皆に知らせたくて,みてもらいたくてそわそわしている私のニセモノ性は,,絵を描くことによって,よりいっそう明白になっていく.


posted by トミタ ナオヒデ at 08:26| Comment(2) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
上野の森美術館で作品を拝見しました。私はヒラ入選ですが先生の作品タイトルを見て漠然と同じ事を描いているのかなと考えていました。ブログを読んで木である事は初めて知りましたが。
失礼ながら、知人二人(それぞれ別に見た人)も同じ系統の絵だと言うので気になっていました。一人は今日一緒に見ていたのですが、これは木じゃないかと言ってました!

私の絵はインクで線を重ねてほぼ真っ黒になった物です。笑 大学の先輩にはいつかは本当に真っ黒になるんだろうと言われました。

私の絵も何かを写して描くという目的はありません。如何に無駄な事をして絵にするかを3ヶ月実践しました。なんでも効率優先の世の中なので絵くらい無駄な事をしても良いんじゃないかと考えています。

私の絵は関西に巡回しませんので実物は先生に見ていただけないと思いますので図録ででもご覧いただければ光栄です。
Posted by 前田秀水 at 2018年05月04日 22:16
前田秀水 様

コメントをありがとうございます.レセプションで作品を拝見しました.前田さんの作品と,勝又さんの作品に,しばらくじっと見入ってしまいました.勝又さんと私が全く異なるスタートラインにいて,前田さんの,あの引き込まれる感じの画面に向かっているのかなあ,などとも空想しました,,私は,以前にフランスの洞窟画を視察に行ったときに,あのあたりの土の白さによって絵が(意図なく)消えていくことによって特別な時間感覚が加わっている,と感じたので,白にこだわっています.記憶が薄く,形状認識にも劣っている私は,その恥多き線を白で消していく作業が,「私」の存在を確定していく上にも必須のようです,,
Posted by トミタ ナオヒデ at 2018年05月05日 19:00
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